宝塚大劇場の公演中に楽屋で学んだ気くばり

愛され気くばり美人道

 

宝塚歌劇団に入ると、公演中は楽屋で過ごします。

楽屋は大部屋・幹部部屋・専科部屋・ゲストルームとあり上級生順・同期ならば成績順に化粧前と呼ばれる席が準備されます。

初舞台の時は人数が多いので化粧前は2名で1つ使用しましたが、組配属されると1つずつ、大部屋の上級生は一人に2つの化粧前が割り当てられます。

通常は座布団を引いて、正座をして化粧前に向かうことが多いですが、お風呂椅子に腰かけたり上級生になると座椅子を使用される方も多くなります。

楽屋での過ごし方や、ルールについては組ごとに少し変わってくると思いますのでここでは割愛しますが、毎日鏡の前で生活することになります。

 

公演中の過ごし方は開演2時間前ぐらいには楽屋入りをして、ウォーミングアップなどを袖やホリゾント(舞台の上手から下手にわたる舞台の真裏の通路ですね)などで行い、舞台化粧に取り掛かります。

慣れてくると30分もかからずお化粧はできるようになりますが、下級生のころは1時間前にはスタートしなければ間に合いません。

 

毎日のことですので、時にはつけまつげが思うようにつかなかったり、眉毛の形がうまくいかなかったり、下地を失敗してしまったりして最初からやり直したりといろいろあります。

 

それ以外にも娘役であれば顔と同じ色のリキッドファンデーションを胸元や腕、背中まで塗らなければならないこともあり、とっても忙しいのです。

人によっては3時間前から楽屋入りをしている方もいらっしゃいました。

 

人の話は手を止めて聞く

楽屋の化粧前で支度をしていると、上級生が向こうからやってこられることがあります。

そういう時はいかなる場合でも手を止めすぐさま立ち上がり話を聞く姿勢になります。

 

個人的にご用事があり来られる場合

向こうから呼ばれて上級生の席まで行く場合

同期全員にご用事があってこられる場合

 

こういったケースがあります。

 

自分に全く関係ない場合でも同期が上級生に何か言われている際は、ご注意をいただいてることがほとんどですので一緒に手を止めて聞きます。

 

これは社会に出てびっくりしたことですが、講義やセミナーなどスピーカーが前で話しているにもかかわらず、ぼそぼそと周りの人と話す人を見てびっくりしました。

タカラジェンヌは私語はしません。必ず今話されている人のほうを向き、真剣に話を聞きます。

 

もし気づいていない同期がいたら注意して一緒に聞くように知らせます。

 

これも規則でしたが、特に理由をいちいち教えてもらったことはありません。でも今から思うと舞台という重要な場所で何かの伝達漏れがあってはいけません。とっても大切なことをお話してくださっているから、忙しい中わざわざ下級生のところまで言いに来てくださるのです。それがわかっていて手を止めないのはおかしいですよね。今から思えば本当に大切なことを躾けられたと思います。

 

社会に出てからも、上司や目上の方が自席まで来られたら手を止め

「何かございますか?」

という姿勢になることも昔は多くありました。

社会に出て受付業務をした際には、これが大きく影響しました。

お客様も話しやすい方に話しますので、何か御用はございませんか?という姿勢は大切ですね。

 

 

アドバイスを頂いたら必ずお伺いにいくこと

公演中は普段お話する機会のない上級生と仲良くなれるチャンスです。

出番が近かったり、たまたま手が空いていたら上級生の早変わりを手伝ったりすることができます。

舞台稽古では場面を止めながら進めていきますので、お稽古場ではわからなかった舞台装置やシーンのイメージ・照明・大道具・小道具・それぞれのお衣装などを初めて見ることになります。もちろん自分の衣装は事前に衣装合わせがあるのでわかっていますが、ほかの方のは知りません。

この舞台稽古で周りの上級生とのバランスなども確認します。

 

下級生の時は、舞台袖に行くまでのライトが漏れない場所にある全身鏡で上級生が最後のチェックをして出かけられるのをよく見に行っていました。大好きな上級生のそばでは「何かお手伝いできることありませんか」アピールもしていました。

でも上級生は毎日そこに立っている私の行動よりもいただけないメイクのほうが気になったようで、メイク方法を教えてくださることになりました。

 

宝塚の舞台に立つにあたり、舞台化粧は自分で行いますので、上級生は経験豊富なプロです。私の顔にあったアドバイスをしてくださいます。特に目の形や顔のパーツの配置が似ている上級生だととても参考になります。

翌日は同じ場所に行って昨日アドバイスいただいたところをお伺いに行きます。これも出番を邪魔しないタイミングが必要です。

 

アドバイスを頂いたらお伺い

ご注意いただいてもそれを改善してできているかお伺い

 

これは基本です。

 

よく相談するだけして、結果どうなったかというのを報告しない人が多いですが、これは私はとても気になります。相談された方はよくなるように好意で大事な時間を割いています。そこには料金が発生していないわけで完全な好意です。感謝の気持ちがあれば必ず報告や進捗状況をお知らせするのは当然のことなのです。

 

宝塚では仲間を蹴落としたりする厳しい世界だと勘違いされる方もいるかと思いますが、まず他人を蹴落とすことを考える暇はありません。

 

これまた大好きな「ガラスの仮面」の漫画の中ではよく主役の北島マヤに意地悪をするシーンがあります。お饅頭を食べるシーンで泥饅頭にすり替わっていたり、台本が違っていたり・・・あるあるですね。

必ず悪だくみを考える人がいるのですが、宝塚ではそんな暇があったら鏡に向かい美しく舞台に立つことを考えて研究する時間に使いますから。

 

公演中での学びはまだまだたくさんありますが、長くなりましたので今日はこの辺で。

また続きは次回のブログでお話いたしますね。

今日も最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

 

おまけ

ちなみに余談ですが、英語で「どうなさいましたか?」ということばを

May I help you?

といいますが、ある映画のワンシーンで客室乗務員がダンディなお客様に

What can I do for you?

と言っていました。

あなたのために何ができますか?直訳しすぎですが、この方がニュアンス的に好き。

しかもアメリカに旅行した際、カフェでコーヒー豆を買いに来たお客様に、おじいちゃま店員さんがこのまま使っていらして、それがまたなんとも素敵で・・・

それ以来、私も外国人に話しかけることがあったらこちらを使うようにしています。

 

いつかこの気くばりも英語で外国人の方に伝えられたらなと思います。

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